十七日午後三時五十分ごろ、愛知県長久手町長配二の民家から男性の声で「父親が拳銃を持ち出して立てこもっている」と一一〇番があった。
駆けつけた県警愛知署地域課長久手交番の木本明史（あきふみ）巡査部長（５４）が民家にいた男から拳銃で首を撃たれた。
玄関先に倒れたままになっていた木本巡査部長は五時間半後、突入した県警機動隊に救助されたが、現場東側で警戒に当たっていた機動隊特殊部隊の林一歩（かずほ）巡査部長（２３）＝同県岩倉市東町＝は左鎖骨を撃たれ、搬送先の病院で死亡した。木本巡査部長は重傷。

調べでは、男はこの家に住む元指定暴力団山口組系組員大林久人（ひさと）容疑者（５０）。

大林容疑者の長男健人さん（２５）と二女里紗さん（２１）もそれぞれ腹と足を同容疑者に撃たれ、愛知医科大病院に運ばれた。軽傷という。

大林容疑者は十八日午前一時二十分現在、家族とみられる女性一人を人質にしたまま、立てこもりを続けている。

愛知署によると、一一〇番を受けて、長久手交番から木本巡査部長と男性警部補（５３）がミニパトカーで現場に到着。
助手席の木本巡査部長が先に大林容疑者宅を訪れたところ、三発の銃声があった。
警部補は玄関先に木本巡査部長が倒れているのを見て同署に応援を求めた。

最初の一一〇番から約二分後には「父親は落ち着いた。拳銃はおもちゃです。とにかく警察は来ないでください」という一一〇番もあった。

大林容疑者は「娘と電話で話をさせろ」と要求、時折、「動くな」と大声を張り上げ、「救急車でも近づいたら撃つ」と叫んでいた。
このため県警は、木本巡査部長の救出に向かえず、同容疑者の説得に当たっていた。
しかし、無線での呼び掛けに応じなくなったことなどから、救出を優先し、部隊を展開、午後九時二十三分に突入して木本巡査部長を救出した。

救出の際、複数の発砲音があり、林巡査部長は左鎖骨に被弾。
防弾チョッキは着用していたが、搬送先の病院で十八日午前零時十四分、死亡した。
関係者によると、林巡査部長はテロやハイジャック事件を鎮圧する特殊部隊「ＳＡＴ」（特殊急襲部隊）に所属していた。

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